花店利用者調査2023年~1.物日の購入率 平均利用額前年比 Flower shop customer survey 2023: Purchasing behaviour and customer evaluations Excerpt 1 Purchase rate and average customer spending
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「花店利用者調査」2023年版では、花小売4企業の顧客(最近1年間利用者)に、利用状況と評価を聞いた。今回は日比谷花壇、青山フラワーマーケット、イオン、ユニクロフラワーの利用者で関東圏在住の20~50代対象。全体の結果は準備中、先に購入「日」と1回当たり平均利用額について紹介する。 前年以上に「高い」という声が目立つものの、求めやすい価格帯でホームユースの比率が高いところは、物価高に抵抗力があり健闘している。
バレンタイン購入率は13~25%、イオン5%。いい夫婦の日、クリスマス、正月、愛妻の日、ミモザの日、ホワイトデー、お盆・お彼岸、その他の日についても調べた。
2023年1月中旬に実施したので、ほぼ2022年中の実態であることに注意。2022年は1~2月実施のため、これも実態はほぼ、前年の2021年の値を反映している。調査概要はページ下部参照。
Results of the 2023 Flower Shop User Survey. Shops surveyed include Hibiya Kadan, Aoyama Flower Market, Aeon and Uniqlo Flower. This article summarises the purchase on high demand dates and average customer spend. The aggregated results are still in preparation. Despite the surge in retail prices, shops with a high proportion of home use at affordable price ranges have shown some resilience and strength. In less than three years since its launch, Uniqlo Flowers, which stands out for its reasonable and simple pricing policy, seems to be welcomed by (new) customers.
The percentage of customers purchasing flowers on Valentine’s Day ranged from 13% (Aoyama, Uniqlo) to 25% (Hibiya) and 5% for Aeon. As this survey was conducted in mid-January 2023, the purchase data reflects actual results for 2022.
報告書_Link_full report
● 物日の購入率
購入率 バレンタイン、いい夫婦の日、母の日他(2022年)
最近1年間(≒2022年)に花を購入した「日」について尋ねた。各店実利用者(20~50代)の回答なので、一般的な「購入率」とは異なる。
フラワーバレンタインの購入者は、日比谷利用者の25%。青フラ13%。日比谷花壇は、いい夫婦の日15%、愛妻の日は6%、母の日購入者は48%と、物日に強い。青フラはこれら物日でもギフトのユーザーをうまく取り込んでいる一方、「その他の日」も36%で、ホームユースや個人的なイベント用の購入者も引き付けている。
イオンは盆・彼岸29%の購入者が目立つが、バレンタインも5%ほどは買っている。物日以外で36%と、日常的な利用もある。イオンは、今回の関東在住者対象の調査では、郊外の男性利用者が多かった。
ホームユースに強いユニクロフラワー 物日も売りつつ、基本はEDLPで需要平準化か
ユニクロフラワーでは、バレンタイン(13%)はじめ、物日にもかなり売れている。さらに興味深いのは、「その他の日」の購入が51%を占めていること。普段使いのホームユースやカジュアル・ギフトに強く、需要の平準化ができているということか?
ユニクロフラワーでは、年間を通して1束390円・3束980円で販売して、花束は300円でブーケ加工してくれる。求めやすく、わかりやすい価格設定に支持が集まる。
1号店開店から2年余り、現在東京近辺と関西で16店舗とオンラインショップを運営している。EDLP(Every Day Low Price)の価格戦略を基本に、物日にも売り、花の小売の中で独自のポジションを築きつつあるのでは。ブーケ加工もシンプルなためか、自由回答にはイベント日の顧客対応への不満はほとんどない。「店を増やしてほしい」という要望が目に付く。ユニクロフラワーが切り開いたマーケットには、まだまだ開拓余地がありそう。
図表 花を買った「日」(2022年)
注:2023年1月上旬実施のため、ほとんどが2022年の利用。各社とも最近1年以内の利用者に質問。関東在住男女20~50代500名が回答
出典:国産花き生産流通強化推進協議会(2023)「花店利用者調査」(委託:ゲルダ・リサーチ)
● 1回当たり購入額
平均購入額
4社平均購入額は2710円。日比谷花壇は4305円(前年比マイナス261円)、青フラ2977円(+180円)、イオン1482円(+227円)。ユニクロは1939円。イオンは異なる業態が混在しているため、イオン系の花店である「ルポゼ・フルール」または「フラワー&ガーデン」のある施設の利用者を抽出して、別途集計している(95名)。
15000円を超える価格帯は、イオンやユニクロでは中心価格帯から離れており1~2名の購入しかないので、これを除いて計算すると、イオン1361円、ルポゼFGは1355円、ユニクロ1574円になる。
全体には価格は上がっているようだが、これをどう考えるか。解釈は留保付きである。仮に、顧客単価の上昇が、今まで比較的低い価格帯で買っていた人が価格上昇により買わなくなったことの反映だったならば、あまり喜べない。新規のライトユーザーが減り、高くても買ってくれるロイヤルな(濃い)ユーザーだけ残っていくと、顧客満足度(CS)は相対的に上がっていくことになるかもしれない。しかし、これは仮定の話ではあるが、単価アップにせよCS上昇にせよ、それが全体のパイの縮小と連動して起こる現象であったとしたら、新陳代謝が落ちることになり、健全とは言えないのではないか、少なくとも花にとっては。
逆に言うと、ホームユースが上向いて自宅用の購入頻度が増え、相対的にギフトの割合が減ったような場合は、平均購入額は下がりうる。売上は価格と頻度と延べ利用者数の掛け算-コストであり、どういう売上構成にしたいか、目標によって平均購入額の意味合いは変わる。
なお、この調査は回答者数が全体で500名と、決して多くはない。高価格帯はもともと購入人数が少ないので、ここでの数人の変動が平均値に響きやすくなってしまう。本来は、各企業300名くらいは確保したいが、予算の制約でなかなか難しい。
図表 1回当たり購入金額
利用店 | n | 平均購入額(円) | (参考)2022年 | 2022-23差額 | 外れ値除く(円) |
---|---|---|---|---|---|
日比谷花壇 | 128 | 4,305 | 4,566 | -261 | - |
青フラ | 138 | 2,977 | 2,797 | 180 | - |
イオン | 133 | 1,482 | 1,255 | 227 | 1,361 |
うちイオン_ルポゼ・F&G | 95 | 1,525 | - | - | 1,355 |
ユニクロ | 101 | 1,939 | - | - | 1,574 |
注:2022年は全国、2023年は関東在住者対象。平均購入金額は、選択肢の金額帯の中央の値を階級値として計算。階級値×該当者数を合計し、総額をnで割って算出した。
出典:国産花き生産流通強化推進協議会(2023)「花店利用者調査」(委託:ゲルダ・リサーチ)
購入価格のカーブ: 気になるホームユース価格帯の需要変化
価格帯別の購入率を順に積み上げて、いくらまでで、何割の人が買っているかを可視化した(累積購入率)。実線は2023年、点線は前年(2022年)の数値を示す。ユニクロは2023年のみ。調査はいずれも1~2月の実施なので、実態はそれぞれ前年の値を反映していることに注意。
2022年(≒ほぼ2021年の値)と2023年(≒ほぼ2022年の値)の各社のカーブを比べると、23年はホームユースの価格帯のところが下振れしている。一方、日比谷や青フラでは、ギフトやイベント向け中心に切り替わる4000~6000円の価格帯以降では前年に近づくが、高価格帯では前年よりやや低めの水準で上限に至るようになっている。
図の見方だが、X軸の任意の価格の地点で、Y軸が何%になっているかをたどると、その価格までに全体の何割の人が買っているかがわかる。例えば、ユニクロで1000円以下の価格ではほぼ50%(実際には49%)、2000円以下まででほぼ8割を占めるということを表す。日比谷花壇では、2022年には全体の38%の人が、2000円までの価格で買っていた。2023年には、この層が31%に縮んでいる。
この結果をどう解釈するか。22年と23年の対象地域の違いの影響はありうるが、利用者が少し上の価格帯に移ったか、あるいは一つの見方として、価格を見ながら品質やボリュームを勘案して、買い控えた人達がいる、という可能性はないだろうか。ホームユースの価格帯においては、前年の値との間隙に、今年買わなかった人たちの思案が、陰影となって透けて映り込んでいるように思える。判じ絵の「影」を読み解くような話だが。
自由回答欄には、「高いので自宅用には買えない。プレゼント用のみ」という嘆きの声がいくつも寄せられていた。価格が上昇し、ホームユースが文字通り「高嶺の花」になってしまったと感じる人たちが少なからず存在している。企業努力を超える要因が重なっていることを考え合わせると、厳しい。辛いものがあるが、一つの現実のようである。
図表 1回当たり購入金額 累積相対度数 2022-2023年
注:2022年は全国、2023年は関東在住者対象
出典:国産花き生産流通強化推進協議会(2022、2023)「花店利用者調査」(ゲルダ・リサーチ委託)
調査の概要
・日時:2023年1月11日(水)~13日(金)
・調査方法:インターネット・アンケート(マクロミル)
・対象企業・業態:日比谷花壇、青山フラワーマーケット、イオン、ユニクロ・フラワー
・回答者:関東一都六県在住20~50代男女で、対象企業で花・植物または関連商品を過去1年以内に購入した人。スクリーニング調査(21877名)を経て該当者に回答依頼。データ・クリーニング後の本調査回答者数は計500名(※前年の2022年は全国・9企業・業態対象1005名解答)
・主な調査項目:利用状況、顧客満足関連指標、サービス品質項目評価、よい点、改善してほしい点
・農林水産省の実証事業として、国産花き生産流通強化推進協議会が実施(令和4年度持続的生産強化対策事業のうち「ジャパンフラワー強化プロジェクト推進事業」)。
・企画・調査設計・分析および報告:ゲルダ・リサーチ 青木恭子
花店利用者調査2023年_本文_Link_full report
対象企業・業態 回答者数
企業・業態 | 回答者数 n | 構成比 | 男:女 | 平均年齢 | 有配偶率 | 東京都比率 |
---|---|---|---|---|---|---|
n | % | % | 歳 | % | % | |
全体 | 500 | 100.0 | 49 : 51 | 40.5 | 64.2 | 44.4 |
日比谷花壇 | 128 | 25.6 | 48 : 52 | 41.1 | 70.3 | 51.6 |
青フラ | 138 | 27.6 | 44 : 56 | 38.9 | 63.8 | 55.1 |
イオン | 133 | 26.6 | 67 : 36 | 42.0 | 63.9 | 30.8 |
ユニクロ | 101 | 20.2 | 36 : 64 | 39.7 | 57.4 | 38.6 |
目的
・花小売店の業態別利用状況と、利用者の評価を把握する。
・花店の顧客が重視するポイント別に、顧客評価への貢献度、底上げすべき点を明らかにする。
・花店はじめ、花の流通関係者にわかりやすい構成として、比較参照やベンチマーキングに役立ててもらえることを目指す。
・企業のランキング付は、調査の目的ではない。特定企業を取り上げるのは、ベンチマークの手がかりを示すためである。
引用について
引用は、基本的に自由。ご自身の責任でご活用ください。(以下、引用例をいくつか挙げますが、この通りでなくても結構です)
・出典:国産花き生産流通強化推進協議会「花店利用者調査 2023年」(調査委託:ゲルダ・リサーチ)
・出典:青木恭子(2023)「花店利用者調査」国産花き生産流通強化推進協議会
・Source: Aoki, Kyoko (2023) Flower shop customer survey 2023: Purchasing behaviour and customer evaluations by business category. Council for Japanese Flower Production and Distribution Enhancement.