花店園芸店 利用状況2025年 Flower & plant shop customer survey 2025 : Excerpt 1 Purchasing behaviour and customer evaluations
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「花店園芸店利用者調査」2025年版解説。花・植物の小売店の利用者に対し、購入状況、店の評価、花の品目やカラートーンの好みを探った。調査結果のポイントを紹介する。今回は、利用状況と顧客満足度指標について。
Results from the 2025 Japan Flower Shop & Garden Center User Survey. This report examines purchasing habits and store evaluations by customers of flower and plant retailers, with special focus on peak season demand and casual gifting. It explores color-tone and style preferences across different retail formats. I will introduce key findings in several installments, beginning with usage patterns.
● はじめに
花店や園芸店の顧客は、店舗や業態によって異なる利用動機を持ち、特徴ある購買行動を示す。本調査では、花店、スーパー、ホームセンター、園芸店という4つの「業態」に注目し、それぞれの最近1年以内の利用者を対象として、利用状況や顧客評価を聞いた。何回かに分けて、その結果を解説する。
対象店は、日比谷花壇、青山フラワーマーケット、花専門店、イオン、スーパー(イオン以外)、カインズ、ホームセンター(カインズ以外)、オザキフラワーパーク(東京都練馬区)、園芸店・ガーデンセンター(オザキ以外)の9つ。店ごとでは回答者数が少ないので、2025年調査では、個々の店よりむしろ「業態」を中心にまとめた。個々の店と園芸店カテゴリー(小サンプル)については、参考値として言及する。回答者は関東圏在住の20~50代で、各店の最近1年以内の利用者(スクリーニング段階では過去の利用者も含む)。
実査は2025年1月。回答者属性など、詳細はページ下部参照。
● 購入用途
自宅用、ギフト、お供え、冠婚葬祭・イベント、ペット供養
花店の利用者は、主にギフト、自宅用、お祝い用の用途が多く、特定の機会を中心に利用されている。また、前年の調査から、花店ではペットの供養用途に一定の需要があることが分かっていたが、他の業態にも当てはまることが確認された(3~5%)。
スーパー(イオン以外)では、過半数(56%)の利用者がお供えや墓参り用の購入者で、実用的で日常的なニーズに応える役割を担っていることが分かる。
日比谷花壇はギフトや冠婚葬祭を中心に、用途が多岐にわたる。
イオンはスーパーの中でもギフト需要が多めで、他のスーパーとは異なる消費パターンを持つことが特徴的である。なお、利用店舗の自由記入欄から判定する限りでは、イオン利用者 77名中52名(68%)が系列のルポゼ・フルールまたはフラワー&グリーン出店施設の利用者だが、これらのブランドは、食品コーナーに隣接しているものの、実際には花専門店に近い形態の売場を展開している。
利用店別の図表は、この記事では基本的に省く。興味のある方は、解説書(集計表付)_Full_report link を参照してほしい。
図表 購入用途
注:単位は% 複数回答のため、合計は100%にならない
出典:国産花き生産流通強化推進協議会(2025)「花店園芸店利用者調査」 各社とも最近1年以内の利用者、関東一都六県在住男女20~50代480名が回答(以下同)
● 利用頻度
利用頻度の分布状況は、花店では年1~2回程度で、特定のイベントや物日に関連した購入が多数を占める。一方、ホームセンターでは年2~4回程度で、首都圏の郊外在住者の比率が高く、定期的に来店するリピーター層の存在が示唆される。園芸店においては、春先のようなピークシーズンを中心に利用する層と、年間を通じて来店する園芸ファンの二層構造になっているのかもしれない。
図表 利用頻度
● 一回当たり購入額
業態ごとの購入価格帯を比較すると、花店は最も高額な消費パターンを示し、最頻価格帯が2000~4000円(40%)、平均単価を試算すると3680円になり、業態平均の2640円を約1000円上回っている。スーパーは低価格帯(500~1000円)が中心である(37%)。
店別では、オザキフラワーパーク(4850円、観葉植物など)や日比谷花壇(4800円、冠婚葬祭やお祝いなどの用途が多い)が特に高額帯の購入者の比率が高い。
図表 一回当たり購入額
● 当店利用率
どの業態でも、約1割強は、「必ず当店で買う」という高い行動的ロイヤルティを示す固定客であることが明らかになった。
特に花専門店(日比谷花壇・青フラを除く)では、「必ず当店」と「8~9割」と答えた顧客が46%と高い集中度を示した。その半面、花専門店の新規顧客(「今回初めて利用」)の獲得率はわずか1.6%にとどまっており、顧客基盤が固定化している懸念が残る。
図表 当店利用率
注:この質問は 最近1年だけでなく、過去の経験も含めた割合
● 計画購入率 vs 店頭での変更率
来店前に どんな点を事前に決めていくか、そのうち店頭で考えを変える点は何か。
全体では回答者の75%が、来店前に品目、価格帯、色合いなどについて、具体性の程度の濃淡はあれ、何らかの計画を持って訪れている。特に価格帯に関しては、事前に決めていく人が過半数を占める。一方、価格には二面性があり、店頭で最も翻意しやすい要素でもあるらしい。
花店利用者間では、品目を事前に決めてくる人は約20%に達し、色合いに関してもある程度イメージを抱いてやってくる消費者が多いが、最終的な購入は店頭で価格を確認して変更する場合が少なくないようである。
スーパーとホームセンターでは、事前に決めない人が3割前後(ついで買い?)。
図表 計画購入の状況と店頭での変更率
注:「店頭で変更しやすい点」は、「事前に決める」とした項目(複数回答)から一つだけ選択(「特に決めない」人を除く)
図表 計画購入率
注:計画購入率は 価格帯や色合いなど、何らかの要素を決めていくと答えた人の割合
● 購入品目の傾向
業態による購入品目の違いも明確で、花店利用者の3分の2(66%)はブーケを購入し、スーパー利用者の66%はお供え用生花に集中している。ホームセンターと園芸店は花・植物以外にも肥料や園芸資材など多岐にわたり、顧客ニーズの多様性が確認された。
図表 購入品目
注:単位は% お供え用生花は榊等を含む ワークショップやレッスンは花・植物関連のもの(スクリーニング質問、本調査回答者対象に集計)
● 顧客満足(CS)評価
顧客満足指標(品質、コスパ、総合満足、継続利用意向、推奨意向)の分析では、平均スコアで花店と園芸店が高い評価を得た。ホームセンターでは、継続利用意向が高いことが特徴である。
また、10段階中TOP2(9~10点)の高評価層は、花店では厚みがあるが、スーパーでは薄く顧客基盤の強化に課題を抱えていると推測できる。
店別では、客単価の高い日比谷花壇がコスパ評価で最も良い評価を得ているが、オザキフラワーパークは品質や総合満足度で最も高い評価を得た。
図表 顧客満足指標 平均スコア 業態別
注:平均評価は10点満点 1=1点~10=10点で割って算出 推奨はスクリーニング調査SQ3のNPSの設問を流用(NPSスコアは普及している別の計算方法があるため別途分析) NPSは11段階「0 勧める可能性は全くない」は0点、CS指標と同様に10点満点として計算元のスコアの度数分布では、すべての指標が1%水準で統計的に有意
参考値として、店別の高評価層(TOP2)の比率の図表を示す。オザキが突出していることがわかる。規模の大きいチェーン店の場合、全方位で多様な顧客のさまざまなニーズに応えていかなければならず、すべての人を高水準で満たすのは至難の業だと思われる。オザキは練馬区の一店舗のみで、地元客のみならず、圧倒的品揃えで園芸マニアが集まるとがった専門店ならではの強みが発揮されている。ただし、オザキの回答者数は少ないため、数値の厳密性には限界がある。
図表 顧客満足指標 TOP2(10段階中9、10)の割合 店別(参考値)
調査概要
・日時:2025年1月24日(金)~1月27日(月)
・調査方法:ネットモニター・アンケート(インテージ)
・対象店・業態:4業態(花店、スーパー、ホームセンター、園芸店) 各業態は下記表の9店から構成
・回答者:関東一都六県在住20~50代男女で、「花・植物または関連商品を 対象企業で 過去1年以内に購入」した人。スクリーニング調査(7020名)で該当者を抽出、本調査回答者は計518名(537名分納品、データクリーニング後の採用数)
・調査項目:利用状況(利用経験、用途、頻度、購入内容、平均利用額、購入内容)、
物流負荷軽減・需要平準化(物日・非物日の購入率、計画購入率・店頭変更項目、業態別潜在ニーズ=品目、カラートーン、スタイル・エモーション・質感の好み)、
顧客評価(品質、コスパ、総合満足(CS)、継続利用意向、推奨意向(NPS))、
自由回答(当店で気に入った花やサービス、改善・欲しいサービス)、
スクリーニング(10店・業態の利用経験、推奨度・要因、買い控え経験)
・農林水産省の実証事業として、国産花き生産流通強化推進協議会が実施(令和6年度持続的生産強化対策事業のうち「ジャパンフラワー強化プロジェクト推進事業」)
・企画・調査設計・分析および報告:ゲルダ・リサーチ 青木恭子
花店園芸店利用者調査2025年_解説書(集計表付)_Link_full report
目的
・小売の視点から、物流負荷低減に貢献しうる川下ニーズを探る
・花・植物小売の業態別利用状況と、利用者の評価を把握する
・顧客が重視するポイント別に、顧客評価への貢献度、底上げすべき点を明らかにする
・花店はじめ、花の流通関係者にわかりやすい構成として、比較参照やベンチマーキングに役立ててもらえることを目指す
・ 小売の視点から、物流負荷低減に貢献しうる川下ニーズを探る
・小売業態別、部分的には店別に、最近の実ユーザーの利用状況や評価を調べ、一般的な生活者調査の「平均」ではとらえられないニーズを分析する
・需要の集中実態(特定物日・品目)と、顕在的・潜在的な嗜好の傾向を照らし合わせ、物流負荷軽減につながりうる需要平準化のヒントを模索する
・花業界の実務者に対して、ベンチマークや現場改善の参考となりうるデータを提供する
・企業のランキング付は、調査の目的ではない。特定企業を取り上げるのは、ベンチマークの手がかりを示すためである
本調査 回答者属性
利用店別 | 回答者数 (n) | 構成比 (%) | 男:女 (%) | 平均年齢 (歳) | 有配偶率 (%) | 東京都在住 (%) | ネット購入 (%) | 世帯年収 (万円) | 持家率 (%) |
全体 | 518 | 100.0 | 51:49 | 42 | 66 | 34 | 3 | 781 | 68 |
日比谷花壇 | 66 | 12.7 | 53:47 | 39 | 67 | 49 | 8 | 1,033 | 64 |
青山フラワーマーケット | 75 | 14.5 | 49:51 | 38 | 56 | 51 | 4 | 850 | 59 |
花専門店 | 61 | 11.8 | 51:49 | 45 | 62 | 36 | 8 | 921 | 62 |
イオン | 77 | 14.9 | 51:49 | 44 | 71 | 26 | 0 | 829 | 68 |
スーパー | 57 | 11.0 | 49:51 | 47 | 60 | 33 | 0 | 816 | 67 |
カインズ | 76 | 14.7 | 47:53 | 44 | 68 | 12 | 1 | 690 | 79 |
ホームセンター | 60 | 11.6 | 53:47 | 42 | 68 | 27 | 2 | 773 | 73 |
オザキフラワーパーク | 19 | 3.7 | 63:37 | 41 | 74 | 63 | 5 | 873 | 68 |
園芸店 | 27 | 5.2 | 56:44 | 42 | 82 | 30 | 4 | 755 | 70 |
注:20~50代男女で関東一都六県在住者を対象に調査 ネット購入率は利用店についての自由回答から判定し集計、実店舗併用者も含む
注意 回答品質のチェック
データは、調査会社でシステム化された品質管理チェックを経て、納品されている。さらに納品後、分析者が個別に厳しくデータクリーニングしている。本調査537サンプル納品中、19件を削除、518サンプルを採用した。全サンプルについて、利用店舗・地域とホームページの店舗リストおよび地図を照合して利用を確認。店名・地域の記入状況、自由回答の内容、購入内容、購入頻度を総合して、花や植物を買っていないのではと疑いの残る場合や、店(ブランド)を取り違えている恐れのある方、不真面目な内容や多重IDと疑われるサンプルは削除している。また、店の分類について、一部振り替えている(たとえば、「ホームセンター」の利用者として回答してもらっているが、実際には利用店名が「カインズ」と記入されていた場合は、「カインズ」回答者として扱う)。
何重かの基準で精査し、回答品質を上げるようにしている。それでも、回答者の解釈や記憶の薄れ、ポイント稼ぎと思われる不誠実な回答が混入している恐れは否めず、それを完全に析出する術が今のところないため、データには若干の不整合が生じ得る。
引用について
引用は、基本的に自由。ご自身の責任でご活用ください。(以下、引用例をいくつか挙げますが、この通りでなくても結構です)
・データについて
出典:国産花き生産流通強化推進協議会「花店園芸店利用者調査 2024年」
・著者の解説について
出典:青木恭子(2025)「花店園芸店利用者調査」国産花き生産流通強化推進協議会
・Source: Aoki, Kyoko (2025) Flower & plant shop customer survey 2025: Purchasing behaviour and customer evaluations by business category. Council for Japanese Flower Production and Distribution Enhancement.