花店利用者調査~2.顧客満足指標、重視点 顧客評価 Flower shop customer survey 2022 Japan: Excerpt 2 Customer Satisfaction (CS) Index

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「花店利用者調査」2022年版から、要点を紹介している。第2回目は、花小売の顧客満足(CS)評価と利用時重視点について、9つの企業・業態への評価。
(1)顧客満足:8つの指標を用い多角的に調べた(総合満足、ニーズ充足、品質評価、品質対価格評価(コストパフォーマンス)、情緒的充足、継続利用意向、店への愛着・共感度、推奨意向)。
総合満足度は、平均ベースでみると、一般の花専門店が最も高い(10点満点で7.5)。高評価のファン層(TOP2)の幅は、日比谷花壇が格段に厚く(31%)、次いで複合店(21%)。一般の花小売店の場合、店も顧客も多様で、スコアの分布はばらつきが目立つ。ニーズ充足度とコスパの評価が最高で、これらが総合的な満足の牽引力となっている可能性がある。
品質評価では、日比谷花壇(7.5)が群を抜く。スーパーでは6.0で、厳しい。コスパは、花専門店(7.3)、日比谷花壇(7.2)、カインズ(7.1)の順。1回当たり購入額が平均の2倍超の日比谷花壇において、コスパへの納得感が高いことに注目。対照的に、スーパーはまず品質評価の向上を急ぐべき。そうでないと、品質に対するバリュー感としてのコスパ訴求も難しい。
情緒的な充足度においては、日比谷花壇(7.5)、青フラ(7.4)が双璧をなす。
継続利用(リピート)意向は、青フラ(7.8)、花専門店(7.7)、日比谷花壇(7.6)の順。継続利用意向には、利便性などの要因も影響する。内的なロイヤルティとして、店・企業にどれくらい愛着や共感を覚えるか(利用後)尋ねたところ、平均では日比谷花壇(7.4)、カインズ(7.0)での支持が特に高かった。推奨(口コミ)意向は、花専門業態に強みがある。
総合的に見て、日比谷花壇の評価が抜き出ているが、ダークホースともいえるのがカフェや雑貨と花・植物を同時に扱う複合店で、部分的には花の既存業態を凌ぐ健闘をみせており、特にTOP2の高評価層が厚い(詳しくは「よい点」に関する自由回答分析参照)。
(2)花や植物の店の利用時重視ポイント:サービス提供の流れに沿って、サービスの機能性・効率性、顧客対応、店舗空間や商品の訴求力、管理体制など、合計30項目につき各10点満点で答えてもらった。上位の重視点(花小売全体)は、「品質管理のよさ」(7.5)、「鮮度」(7.5)、「アクセスの利便性」(7.4)、「少量でも買いやすい」(7.3)のように、業態横断的に共通するベーシックな項目だった。   



2. 花店 顧客満足指標、重視点:企業別業態別顧客評価

(1) 内容

本調査では、主な花小売業態別に、利用状況と顧客の評価について分析した。 前回は、花店利用実態(購入頻度、単価、利用理由など)のデータを紹介した。
今回は、企業・業態別に、品質や価格、顧客満足に関わる評価をまとめる。

・顧客満足(CS)関連指標
品質、価格対品質評価(コストパフォー マンス)、総合満足、情緒的充足、継続利用意向、共感度、推奨(口コミ)意向
・花店利用時の重視点
サービス品質に関する項目別重視度

(2) 顧客評価 8つの指標

企業・業態ごとに、顧客満足に関連する8つの指標を策定し、スコアを算出した。

「総合満足」・・・商品やサービスについて、さまざまな観点から総合的に判断した満足感
「ニーズ充足」・・・利用者の必要性やニーズの充足度
「品質」・・・利用者の主観による商品やサービスの品質評価
「品質対価格」(コスト・パフォーマンス)・・・時間的・金銭的コストを勘案した主観的品質評価
「情緒的充足」・・・感覚的、感情的、情緒的な充足感
「継続利用意向」・・・今後の利用継続意向(ロイヤルティ)
「共感・愛着」・・・利用後の、店への愛着や共感の度合
「他者推奨意向」・・・他人への利用推奨の意向(口コミ)

各指標とも、肯定~否定まで各10段階(1=1点~10=10点)で評価してもらい、平均スコアおよびTOP2(上位2段階=9,10選択者)の回答者の比率を算出している。

(3) 顧客満足評価

➀ 総合満足度

一般の花専門店は、平均ベースでは、総合満足度が最も高い(10点満点で7.5)。 しかし、TOP2層、つまり高評価のファン層の幅に注目すると、日比谷花壇の方が格段に厚く(31%)、続く複合店(21%)と10ポイントもの差がある。一般の花小売店の場合、ニーズ充足と価格(ここではコスパ)面での評価が最高で、これらが総合的な満足の牽引力となっていそうである。
複合店は全体に特にTOP2が高評価だった。空間の体験価値、ライフスタイルと連続性のある見せ方や提案が成功しているのかもしれない。

➁ニーズ充足

利用者のニーズ充足度は、平均では専門店(7.4)が高い。

➂品質評価

品質評価では、日比谷花壇が、平均(7.5)でもTOP2(31%)でも優れている。一方、スーパーの品質評価は6.0で、厳しい目が注がれている。

➃コストパフォーマンス

品質の対価格での評価(コストパフォーマンス)は、花専門店(7.3)、日比谷花壇(7.2)、カインズ(7.1)の順。1回当たり購入額が平均の2倍を超える日比谷花壇において、コスパ評価が高いことに注目すべき。
対照的に、スーパーは品質評価が低く、それゆえに、コスパ訴求も簡単ではない。スーパーは(潜在的に)利用者層が厚いため、ここでの購入経験は、花小売全体の評価に響くことが懸念される。

➄情緒的充足

花や植物を買い、心を動かされ、情緒的に充たされたかどうかを、情緒・感情価値指標としてスコア化すると、日比谷花壇(7.5)、青フラ(7.4)が双璧をなす。

➅継続利用(リピート)意向

継続利用(リピート)意向は、青フラ(7.8)、花専門店(7.7)、日比谷花壇(7.6)の順。継続利用意向は、顧客ロイヤルティの一要素であるが、アクセス利便性や用途(葬儀などでは継続的に利用したいと言いにくい)などの要因に左右されやすいことに注意。

➆共感・愛着度

内的なロイヤルティを示す指標として、店・企業への(利用後の)愛着・共感度も尋ねている。共感度が特に高いのは日比谷花壇(7.4)、次いでカインズ(7.0)。

➇推奨意向

推奨(口コミ)意向も、花専門業態に強みがあり、平均では日比谷花壇(7.4)、青フラ(7.4)、専門店(7.1)の順。

図表 顧客満足8指標 平均スコア

指標総合満足ニーズ充足品質評価コスパ評価情緒価値継続利用意向共感愛着推 奨
全 体6.76.76.86.76.87.26.76.7
日比谷花壇7.37.37.57.27.57.67.47.4
青フラ7.27.37.26.97.47.86.96.9
花専門店7.57.47.37.37.47.76.96.9
イオン6.16.06.16.26.16.76.36.3
スーパー5.96.06.06.26.16.76.26.2
カインズ6.86.97.07.17.07.47.07.0
ホームセンター6.46.46.46.66.37.06.26.2
通販、ネット6.36.46.56.56.56.96.36.3
複合店6.96.86.96.67.37.26.96.9

TOP2評価者の割合

指標総合満足ニーズ充足品質評価コスパ評価情緒価値継続利用意向共感愛着推 奨
全 体16.4%16.8%17.9%18.2%21.3%28.2%16.7%17.4%
日比谷花壇31.1%30.1%31.1%27.2%33.0%37.9%29.1%31.1%
青フラ20.9%22.7%23.6%21.8%33.6%40.0%18.2%28.2%
花専門店20.2%19.3%21.1%23.7%28.9%28.9%18.4%21.1%
イオン7.0%7.0%7.9%9.6%10.5%20.2%9.6%8.8%
スーパー11.3%9.6%10.4%13.9%13.9%21.7%10.4%8.7%
カインズ12.4%15.9%18.6%19.5%21.2%28.3%15.9%14.2%
ホームセンター10.9%10.9%13.6%14.5%11.8%20.9%10.9%9.1%
通販、ネット14.0%16.7%13.2%14.9%14.9%26.3%13.2%9.6%
複合店21.4%20.5%23.2%19.6%25.0%30.4%25.9%27.7%
出典:国産花き生産流通強化推進協議会(2022)「花店利用者調査」(委託:ゲルダ・リサーチ)



図表 顧客満足指標 花小売専門業態と複合店

CS指標図表_花専門複合_平均2022
CS指標図表_花専門複合_TOP2_2022

出典:国産花き生産流通強化推進協議会(2022)「花店利用者調査」



図表 顧客満足指標 量販店

CS指標図表_量販_平均2022
CS指標図表_量販_TOP2_2022

出典:国産花き生産流通強化推進協議会(2022)「花店利用者調査」



(4)花店利用時の重視点

➀30項目のサービス利用時重視点

花や植物の店、サービスの利用時に重視するポイントは何か、全員に尋ねた。サービス提供の流れに沿って、サービスの機能性・効率性、顧客対応、店舗空間や商品の訴求力、管理体制など、合計30項目についてそれぞれ10点満点で答えてもらった。

・上位の重視点(花小売全体)
「品質管理のよさ」(7.5)
「鮮度」(7.5)
「アクセスの利便性」(7.4)
「少量でも買いやすい」(7.3)
「清潔感」(7.3)
「日持ち」(7.2)
「外れがない」(7.2)
「ついでに買える」(7.1)
「季節感ある花や植物」(7.1)
「価格設定の明確さ」(7.1)

 このように、「品質管理」や「鮮度」のように、業態横断的に共通するベーシックな項目が並ぶ。

なお、重視項目は基本的に実店舗用に設計されているが、通販・ネットは、実店舗とは重視ポイントが異なる(自由回答分析)ので参考値である。実物の質感やボリュームを確認できる仕組みや、配送も含めた品質管理や料金設定など、ネット利用者の関心と不安について、理解を深める必要がある。


➁企業・業態別重視点

業態別の顧客評価ポイントを示す。

図表 企業・業態別 花店利用時重視項目

No.重視項目全体日比谷花壇青フラ花専門店イオンスーパーカインズホームセンター通販、ネット複合店
 n1005103110114114115113110114112
1店頭(サイト)での情報提示6.27.06.56.55.85.46.25.76.66.2
2価格設定が明確7.17.47.57.46.76.57.27.06.97.3
3SNSでシェアしたくなる商品や店5.26.05.95.04.94.65.34.45.26.0
4バラエティが豊富6.87.37.37.36.35.96.96.66.67.1
5べ-シックな商品が揃う6.77.37.17.06.35.87.06.46.66.8
6季節感ある花や植物7.17.77.67.86.76.46.86.86.87.4
7よそにはない独自な商品6.57.17.16.86.15.56.56.16.56.8
8外れがなく、安心して利用できる7.27.77.87.86.66.37.06.77.27.3
9日持ちがよい7.27.57.87.66.86.47.26.77.37.4
10鮮度がよい7.57.98.08.17.06.77.37.17.47.8
11品質管理がよい7.57.98.08.07.16.87.27.07.57.7
12少量でも買いやすい7.37.47.87.87.06.77.26.97.17.4
13場所(アクセス)の利便性7.47.57.87.97.17.17.47.46.97.5
14他の用事の「ついで」に買える7.17.67.77.46.96.77.37.06.56.9
15駐車場、駐輪場が整備6.56.05.76.36.86.17.37.06.56.8
16買い物や手続きがスム-ズ7.07.37.47.36.96.57.36.76.77.2
17サブスクリプションで買える4.85.65.14.04.84.35.24.15.05.2
18新しいスタイルやサ-ビスの提案5.56.36.15.35.14.75.75.05.55.9
19キャンペ-ンやフェアなどイベントが充実5.76.56.25.25.64.95.85.15.95.9
20清潔感がある7.37.68.07.67.16.77.16.67.17.6
21店舗(サイト)に驚きや楽しさがある6.46.77.06.46.35.46.45.86.47.0
22店舗(サイト)の雰囲気がよい6.87.27.67.06.56.06.86.36.87.3
23自分のニ-ズを的確に把握してくれるスタッフ6.87.47.67.56.45.96.56.36.67.2
24好感が持てるスタッフ応対7.17.67.87.86.86.26.86.67.07.4
25スタッフのスキルの高さ6.97.57.77.56.56.16.86.36.87.1
26花・植物のケアについて相談できる6.77.27.37.36.55.66.76.36.67.3
27特殊な要望やクレ-ムへの誠実な対応6.57.16.76.76.25.76.56.26.66.7
28農薬等を抑えたエコな花・植物の扱い6.16.96.45.96.25.36.45.96.06.4
29商品や包装の無駄・ロス防止6.36.96.86.26.45.76.55.96.26.4
30環境やスタッフの健康への配慮6.47.06.96.26.35.86.56.06.16.6


図表 花店利用時重視項目 花専門店、複合店


重視項目図表_花専門複合2022

出典:国産花き生産流通強化推進協議会(2022)「花店利用者調査」



図表 花店利用時重視項目 量販店


重視項目図表_量販2022

出典:国産花き生産流通強化推進協議会(2022)「花店利用者調査」



調査の概要
・日時:2022年1月31日(月)~2月2日(水)
・調査方法:インターネット・アンケート(マクロミル)
・対象企業・業態:花専門店、量販、ネット通販、複合店
・回答者:花・植物を扱う店で、過去1年に購入した人 1005名(本調査)
・主な調査項目:利用状況、顧客満足関連指標、サービス品質項目評価、よい点、改善してほしい点
・農林水産省の実証事業として、国産花き生産流通強化推進協議会が実施(令和3年度持続的生産強化対策事業のうち「ジャパンフラワー強化プロジェクト推進事業」)。
・企画・調査設計・分析および報告:ゲルダ・リサーチ 青木恭子
花店利用者調査2022年_本文リンク_Link_full text
https://www.researchgate.net/profile/Kyoko-Aoki/research

対象企業・業態 回答者数

 企業・業態 回答者数 n構成比 %男:女 %平均年齢
 全 体1005100.0%46:5440.3
1日比谷花壇10310.2%47:5337.8
2青フラ11010.9%36:6435.1
3花専門店11411.3%39:6141.4
4イオン11411.3%51:4940.3
5スーパー11511.4%50:5042.0
6カインズ11311.2%56:4440.5
7ホームセンター11010.9%59:4141.7
8通販、ネット11411.3%49:5142.6
9花・植物とカフェなどの複合店11211.1%31:6940.4

引用について

引用は、基本的に自由。ご自身の責任でご活用ください。(以下、引用例をいくつか挙げますが、この通りでなくても結構です)
・出典:国産花き生産流通強化推進協議会「花店利用者調査 2022年」(調査委託:ゲルダ・リサーチ)
・出典:青木恭子(2022)「花店利用者調査」国産花き生産流通強化推進協議会
・Source: Aoki, Kyoko (2022) Flower shop customer survey 2022: Purchasing behaviour and customer evaluations by business category. Council for Japanese Flower Production and Distribution Enhancement.

免責事項 本報告書作成に当たっては、細心の注意を払って作業を行なっていますが、万一情報に誤りがあった場合でも、本団体及び著者は一切の責任を負いかねます。また、内容を読者がご利用あるいは引用されることにより、副次的に発生したトラブルや損失についても同様です。本サイトの内容は、予告なしに更新や削除されることがあります。ご了承ください。
本調査は、農林水産省の助成で実施された。 This research was funded by the Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries, Japan, and conducted by the Council for Japanese Flower Production and Distribution Enhancement. Gerda Research was commissioned to do the survey.