花店利用者調査2024年~1.利用用途、物日の購入率、サイズ選好 Flower shop customer survey 2024: Purchasing behaviour and customer evaluations Excerpt 1 Usage, Purchase rate and size preference

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「花店利用者調査」2024年版のデータが2月に上がってきた。今年度は、「物流負荷低減に資する川下ニーズ」がテーマとなっており、花のサイズや用途ごとの利用実態について調べた。対象の花小売は、日比谷花壇、青山フラワーマーケット、イオンの3社で、回答者は前年2023年に続き関東圏在住の20~50代で、各社の顧客(最近1年間利用者)。全体の結果は準備中。内容はトピックごとにシリーズでまとめまとめていく。今回は 用途別購入率、物日の需要と切り花のサイズについて。
用途別では、青フラはギフトも自宅用も健闘。ペットお供え用は3~5%。バレンタイン購入率は日比谷花壇が最も高く、回答者の13.4%、青フラ9.5%。いい夫婦の日は女性の購入もあり。母の日、正月、愛妻の日、ホワイトデー、お盆・お彼岸などについても聞いている。サイズの好みは 青フラでは20㎝台を中心に小ぶりに集中。日比谷花壇はもう少し選好が緩やかで、少数ながら75㎝以上でも好む層がいる。
実査は2024年1月末で、ほぼ2023年中の数値。調査概要はページ下部参照。なお、今回は調査会社をインテージに変更。
Results from the 2024 Japan Flower Shop User Survey are in. The surveyed shops include Hibiya Kadan, Aoyama Flower Market, and Aeon. This summary focuses on flower purchases during peak demand periods and popular sizes for home use. Additional findings are currently being prepared.
On Valentine’s Day, the percentage of customers buying flowers varied from 8.5% at Aeon to 13% at Hibiya. The survey, conducted in late January 2024, primarily reflects 2023 purchase trends.
報告書は後日公開予定_Full_report in preparation


● 購入用途

自宅用、ギフト、お供え、冠婚葬祭・イベント、ペット供養

日比谷花壇はギフト71%のほか、イベント・お祝い用に強く27%。青フラではギフトが78%と高いが、自宅用も51%と過半数。イオンは お供えが47%と半数に迫る。
ペットの供養用の花は、今回初めて調べたが、日比谷で5%、イオンでも4.8%で、一定の需要があることがわかった。

図表 購入用途

usage_2024

出典:国産花き生産流通強化推進協議会(2024)「花店利用者調査」(委託:ゲルダ・リサーチ)各社とも最近1年以内の利用者、関東一都六県在住男女20~50代480名が回答(以下同)


● 物日の購入率

購入率 バレンタイン、母の日他(2023~2024年)

最近1年間(≒2023年)に花を購入した「日」について尋ねた。今年度は物流対策関連で、需要平準化が主要テーマの一つとなっているため、代表的な企業別に物日の利用集中状況について調べたもの。
フラワーバレンタインの購入者は、日比谷利用者の13%。青フラ10%。日比谷花壇は母の日(50%)をはじめ、物日に強い。青フラはこれら物日も好調だが、それ以外のカジュアルギフトやホームユースなど「その他の日」で売れていることにも注目。イオンは盆・彼岸の利用が目立つ。

なお、ここでいう購入率は、各店の最近1年以内の利用者(20~50代)のなかで、それぞれの物日に購入した人の比率であることに注意。市場での一般的な「購入率」とは異なる。また、女性や自宅用ユーザーの比重が厚い店では、特に男性のギフト利用が多い物日の購入率は、相対的に低くみえる。

図表 花を買った「日」(2024年)

PurchaseDay_2024


図表 花を買った「日」 性別年齢別(2024年)

PurchaseDay_gender_age2024


物日の満足度

物日購入者の満足度を探ってみた。次の図は、横軸が各日の購入者の総合満足度(CS)平均値、縦軸が高満足層(10段階中上位2段階TOP2)の比率、バブルの大きさは購入者数の多寡を示す。ただし、満足度については、後で改めて別稿にまとめるが、その店の商品やサービスについてあくまで総合的に尋ねているもので、物日ごとの満足を尋ねたものではない。
最初の図は、複数の物日や自宅用など他の用途の併用者も含む。母の日は購入者が多く(バブルが大きい)、かつ満足度が高めで、高満足層も3割に上り、確かに非常な日であると推測される。バレンタインデーやホワイトデー、愛妻の日などは購入者はさほど多くはないが、それなりに満足している層が買っている。
物日は需要平準化という視点からも分析しているが、ここで気になるのは「いずれも当てはまらない」のポジションである。これは物日以外の自宅用やギフト・冠婚葬祭等でだけ買った人で、物日購入者より満足が低そうである。日常のお供えだけの購入者も含まれており、花にさほど強い愛着を感じない人も混じっていることも、影響しているかもしれない。

図表 物日と満足度 複数日・用途利用者含む全体 PurchaseDay_CSbubble_total_2024


次に、複数の物日購入者162名を除き、特定の物日「だけ」の購入者を抽出して、満足度をプロットしてみた。他の日に買っておらず、 エントリー あるいはライトユーザーが多いと推測される。全体的に 複数日購入者を含んだ前の図より、評価が低めであることが見て取れるだろう。それでも母の日はまずまずで、やはり母の日は、エントリー層が花についてポジティブな経験を得る機会という点でも、貴重な存在と言えるかもしれない、少なくとも今回の対象の3社では。母の日のよい購入体験をきっかけに、ホームユース(今回調査のテーマの需要平準化)に誘導できるような施策があってもいいのではないか。

少し残念なことに、ミモザの日の評価は、いまひとつ振るわない。ミモザの日は、比較的購入率の低い20代が買っている日という点でも、二重に気になる。私は自分の山や畑で何本もミモザを育てているので、露地栽培で3月8日に「ミモザ」のイメージ通り、まんまるのふわふらの花がゆらゆら揺れる理想の状態で店頭に並ぶのは、半分はその年の天候と運任せ、制御が困難であることはよくわかる。日持ちの研究や技術が積み重ねられている一方で、3月に花屋を回ると、店によっては、アカシアミモザなどはほぼドライフラワー状態になっているのを見かける。ドライはドライでとてもかわいいのだが(針状の葉が散ることを除けば)、イメージ通りのふわふわ感を求めるお客さんにとっては、いま一つと感じたとしても無理はない。そもそも、ミモザの日とは言いながら、ミモザ自体はブーケに入っていなかったりもする。ネット販売では特に、調達の確実性や揃えられる数量を考えれば、ミモザの日に合わせたミモザの提供はリスキーかもしれない。そうはいっても、やはりこの日に買ってくれた、特に若い世代のライトユーザーをがっかりさせてはいけない… 。悩ましい。

ホワイトデー、愛妻の日は、その日だけ買っている人に限れば、高い満足がとれず、そもそも購入者が少ない。全体では比較的良いポジションだったのはなぜだろう? 推測するに、おそらく、複数の日や用途で利用していて店にある程度満足しているミドル以上のユーザー層がこの日にも買っており、彼らの評価が反映されているのではないか。

図表 物日の満足度 各物日の単独利用者 PurchaseDay_CSbubble_onlyday_2024


● サイズ感

飾るサイズ、利用店での購入サイズ、最適と感じるサイズ

物流テーマ関連設問。花のサイズ(自宅用切り花)について、「飾るサイズ」「当店で購入するサイズ」(以上複数回答)「最適サイズ」(単一回答)を尋ねた。自宅に飾っていない人には、想定あるいは過去の記憶で答えてもらっている。サイズは回答者の体感に基づく回答なので、実際の花の大きさとは多少のズレがありうる。

青フラ利用者では、小ぶりに選好が集中していることがわかるだろう(最適サイズは68%が29㎝まで)。
参考に、この協議会で2023年8月に実施した「花の消費選好」(設問は同じにしてある)の結果も掲載した。一般生活者では半数以上が花の非購入者ということもあり、青フラと比べても、極端と言いたくなるほどに短径志向(20㎝未満が最多で37%)が強い。

図表 自宅用切り花 最適と感じるサイズ 利用店別

size_preferences_by_shop2024


各店の分布を見ると、青フラでは購入・利用・最適サイズとも、20㎝台をピークとする、幅が狭く尖度が高めの山型で、カーブの形状がほぼ重なる。最適サイズが低めなのは、これだけ単一回答であるため。
日比谷花壇の利用者では、サイズの選好はもう少し緩やかで自由度があり、75㎝以上でも少数ながら好む層がいる。飾るサイズと購入サイズは46㎝台だった。とはいえ、最適サイズ平均値は33㎝とやはり短め。

購入サイズと飾るサイズに乖離がある場合、大きめでも提案力で販売できている可能性の半面、ニーズと規格のミスマッチも疑う。イオンは40~50㎝台あたりで、やや差が広がっている。これをどう解釈するか。この調査でカバーできていない60代以上の層(季節の花に詳しい)の嗜好にもよるが、気になるところ。


図表 自宅用切り花 利用・購入・最適サイズの分布 利用店別

size_preferences_Hibiya2024

size_preferences_AFM2024

size_preferences_AEON2024


平均値も示しておく(下図、単位は㎝)。

図表 各サイズの平均値 

size_preferences_meantable2024

注:平均値は、各選択肢の金額帯の中央の値を階級値として計算、20㎝未満は10.0、1m超は112.5として算出 一般生活者は2023年8月実施「花の消費選好」調査から引用、花の非購入者を含む全国の20~50代男女



調査概要

・日時:2024年1月29日(月)~31日(水)
・調査方法:ネットモニター・アンケート(インテージ)
・対象企業・業態:日比谷花壇、青山フラワーマーケット、イオン
・回答者:関東一都六県在住20~50代男女で、「花・植物または関連商品を 対象企業で 過去1年以内に購入」した人。スクリーニング調査(7020名)で該当者を抽出、本調査に回答依頼。本調査回答者は計480名(データクリーニング後 ※前年の2023年はマクロミルのモニター対象に実施、関東在住者、ユニクロも加えた4企業500名)。
・主な調査項目:利用状況、規格のニーズ、顧客満足指標、サービス項目重視点、よい点、改善してほしい点。スクリーニングでは10企業・業態の利用経験や推奨度、環境資材の価格プレミアム。
・農林水産省の実証事業として、国産花き生産流通強化推進協議会が実施(令和5年度持続的生産強化対策事業のうち「ジャパンフラワー強化プロジェクト推進事業」)。
・企画・調査設計・分析および報告:ゲルダ・リサーチ 青木恭子
花店利用者調査2024年_報告=作成中_Link_full report_in preparation


目的

・小売の視点から、物流負荷低減に貢献しうる川下ニーズを探る。
・花小売店の業態別利用状況と、利用者の評価を把握する。
・花店の顧客が重視するポイント別に、顧客評価への貢献度、底上げすべき点を明らかにする。
・花店はじめ、花の流通関係者にわかりやすい構成として、比較参照やベンチマーキングに役立ててもらえることを目指す。
・企業のランキング付は、調査の目的ではない。特定企業を取り上げるのは、ベンチマークの手がかりを示すためである。

対象企業・業態 回答者数

企業・業態回答者数 n構成比男:女平均年齢有配偶率東京都比率持家率参考 ネット購入率
 n
全 体480100.042 : 5840.351.541.758.36.7
日比谷花壇15732.748 : 5240.456.148.462.515.9
青フラ15832.935 : 6539.047.551.346.94.4
イオン16534.442 : 5841.550.926.165.50.0
注:20~50代男女で関東一都六県在住者を対象に調査 ネット購入率は利用店についての自由回答から判定し集計、実店舗併用者も含む


注意 回答品質のチェック
データは、調査会社でシステム化された品質管理チェックを経て、納品されている。さらに納品後、分析者が個別に厳しくデータクリーニングしている。本調査500サンプル納品中、20件を削除、480サンプルを採用した。全サンプルについて、利用店舗・地域とホームページの店舗リストおよび地図を照合して利用を確認。店名・地域の記入状況、自由回答の内容、購入内容、購入頻度を総合して、花や植物を買っていないのではと疑いの残る場合や、店(ブランド)を取り違えている恐れのある方、不真面目な内容や多重IDと疑われるサンプルは削除している。Hibiya-Kadan StyleやWONDER FLOWERを青フラと勘違いするケースは、数件見られた(誤認はいずれも、駅と一体で青フラに似た立地の店舗)。
何重かの基準で精査し、回答品質を上げるようにしている。それでも、回答者の解釈や記憶の違い(特にブランドの誤認)はありうるほか、ポイント稼ぎと思われる不誠実な回答が混入している恐れは否めず、それを完全に析出する術が今のところないため、データには若干の不整合が生じ得る。

引用について

引用は、基本的に自由。ご自身の責任でご活用ください。(以下、引用例をいくつか挙げますが、この通りでなくても結構です)
・出典:国産花き生産流通強化推進協議会「花店利用者調査 2024年」
・(著者の意見・解釈に関する場合は以下でも可)出典:青木恭子(2024)「花店利用者調査」国産花き生産流通強化推進協議会
・Source: Aoki, Kyoko (2024) Flower shop customer survey 2024: Purchasing behaviour and customer evaluations by business category. Council for Japanese Flower Production and Distribution Enhancement.

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本調査は、農林水産省の助成で実施された。 This research was funded by the Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries, Japan, and conducted by the Council for Japanese Flower Production and Distribution Enhancement. Gerda Research was commissioned to do the survey.